とばりが降り街の提灯に灯りが灯る頃、しっとりとした風情をたたえた町並みを舞妓や芸妓たちが艶やかな着物の裾を持ち上げて行き交う。華やかな中にもあどけない表情が残る舞妓を見て「舞妓」になりたいと志願する女の子はあとを絶たないと聞くが、私たちもまた、艶やかで美しい舞妓と密かに遊んでみたいと願望する。
しかし紹介者がいないと遊ぶことができないシステムや、花代と称する料金がなにやら凄く高いと聞くと、庶民にとって花街は夢のまた夢
なのだ。
ところが花街でも最近ではPRと誘客をかねて、様々な企画を打ち出している。その一つが体験企画なのだが、着付けとメイクで誰でも即席の舞妓はんになれるというもの。さらに「低料金で本物の舞妓さんの踊りをお座敷で見よう/所要時間は120分」というものが最近になって出た。
この日、私たちは総勢40名で桂川にかかる
渡月橋を渡り、艶やかな世界にほんの少しでも触れてみたいという物見遊山で、嵐山温泉の老舗旅館へと足を運んだ。
団体で舞妓さんと遊ぶという前代未聞の体験、果たして楽しさのほどはどうだったか?
結論を先に申せば男性だけでなく、女性にも「また行きたい〜」と大好評だった。
宴会の挨拶が終ると参加者は京会席に舌鼓を打ち、盃を重ねはじめる。しばらくすると舞台の袖から置屋(舞妓さんが所属するプロダクションのようなもの)の女将が現れ、丁重な挨拶が始まる。その後、三人の舞妓が次々と現れ、女将のお囃子で一人づつ舞いを披露。それが終ると彼女らは舞台を降り、宴席に付いてくれたのだ。
はんなりとした舞妓を目の前にした我々は、緊張のせいで誰もが舞い上がってしまい、「生れはどこ?」「年は幾つ?」「休みには何をしている?」などど高尚な話題とは縁のない会話しかできなかったが、それでも舞妓さんと肩を並べカメラに収まる参加者の顔は、どの顔もこれ以上ないというくらい満願の笑みを浮かべていたのだった。
(撮影はポーズの要求もカット数も自由。これだけでもラッキーです)
写真・文/山本純一