飛騨の細道 8 - 「花いらんかな。」


■花いらんかな。

高山の花は色がとても鮮やかですね。
旅人の口からこんな感想を何度か聞いた。
空気がきれいだからだろうか。
それとも水が清らかだからだろうか。
いや、町の景色に寄り添うように
花が咲いているからだろう。

むかしは花売りが何人かいて、
彼女たちは朝市で売れ残った花をリアカーに積み、
やわらかい物腰とのんびりした飛騨弁で売り歩いた。
「あねさま〜、花いらんかな。安うしておくで、どうやな」
「こわいこっちゃな、今日はいらんでいな。またたのむさ」
どこか浮き世離れした会話も花を美しくするのに一役買っている。