■美しい集落。
美しくてうまい山水が暮らしの中を流れている。
考えてみればこれほど贅沢なことはない。
飛騨市宮川町種蔵地区ではいたるところで
山水が堰を切ったように勢いよく流れ、
村全体が澄んだ水の音に洗われている、とても美しい集落だ。
中央アジアには地球最後の桃源郷と言われる
『フンザ』という村があるが、
石積みの棚田や板蔵や古民家が点在する種蔵は、
日本の原風景を残す理想郷かも知れない。
こんな風景は作ろうとして作られるものではなく、
祖先たちの果てしない営みの結果が風景として結晶しているのだ。
「蚕を飼っていた昔はどの世帯も白川郷のような大家族ばかり。
村にも活気がありましてな。
ところがいまは27人しかいなくなり、
そのうちの6割が年寄りなんだから、寂しいもんですな」
ところが最近では民家を改造したホテルができ、
お年寄りたちが総出で、飾り気のないもてなしに躍起になり、
張り合いが生まれた。(村の人全員が従業員になるのだ)
種蔵のおじいちゃん、おばあちゃんがんばれ!
写真は種蔵かぶら。
一見するとニンジンのように見えるが
れっきとしたかぶらである。
歯ごたえは飛騨の赤かぶらとは似て非なるもので、
大根の漬け物より固いが、味は逸品。
しかし残念なことに非売品なのだ。