飛騨の細道 21 - 「みずから作る旅。」


■みずから作る旅。

200年以上も続いている会社は日本が3,000社。ドイツは600社。
そしてアメリカは建国以来200年以上続いている会社は、
わずか14社しかない。
アメリカでは3代も続いたら大企業になるか、
廃業しているかのどちらかだと言われる。

欧米のように株主への安定した配当を優先するのでなく、
社員の雇用を保障しながら職人の熟練度をあげ、
彼らと一緒に「ものづくりとえ創業からの歴史は浅くても、
「飛騨人の生活と意識を変革し、いまなお範たる存在」であれば
老舗の名に値するのでないだろうか。

とはいえ、時代の潮流はあまりにも激しく、
最近になって二つの老舗が暖簾をおろした。
そのひとつが200年以上続いた老舗旅館の長瀬である。

これはとある老舗料亭の主人に聞いた話だ。
「年に一度ならず二度三度とおいでになる旅のひとは、
いきつけの古物商の主人と話をしたり、
じぶんでさがした喫茶店へ再三訪れるのを楽しみにしている」というのだ。
これといった風景に出会ったり、きまった文化的施設を訪れるのではなく、
じつにささやかな楽しみを求めて、なんどもやってくるのである。

その人はといえばリーゾナブルなビジネスホテルに宿をとり、
夕食は料亭でというから、
飛騨への旅も随分と個性的になってきたのだ。