飛騨の細道 26 - 「守り継がれる大般若経」


■守り継がれる大般若経
 
大般若経とはお釈迦さまが説かれたお経なのだが、
ここには「一切みな空」という仏教の中心となる理が
述べられている。

この経本はなんと600巻にも及ぶというが、
これを僧侶たちが読み上げ、
五穀豊穣や無病息災といった厄よけを願うのが
「大般若経法要」だ。

禅寺ではお正月などに執り行うと聞くが、
「大般若経法要」を一般の家で行うとなると
財力と人手がないとなかなかできない。

そんな中、老舗料亭「角正」では2月になると
「大般若経法要」を行うと聞き、のれんをくぐった。

庭をのぞむ大広間の床間には仏画がかかり、
みるとまんなかにお釈迦さま。
その左右に獅子にまたがる文殊菩薩と、
象に乗った普賢菩薩がいた。

慈悲と知恵をつかさどる仏さまの前で
両ひざ・両ひじを地に着けて伏し、
さらに合掌して頭を地につける禅僧。

祭主にあたる禅僧は五体投地という最高の敬礼を、
お釈迦さまの仏画の前で、いくどとなくおこなった。

経本が納められている箱の前に着座する6人の僧侶は
それを合図に早口でお経を詠みあげはじめた。

ときおり邪気を払うように大きな声を張り上げると、
僧侶たちは経本をアコーディオンのように広げだした。

これは転読といい、じっさいは読んでいなくても
読んだとみなされる所作なのだ。
(こどもは学校でこれをやらないように)

こうしてひとりひとりの僧侶が
100巻の経本を読み切ると、厄払いの仏事は幕をおろす。

そして法要後、般若湯(お酒)が全員に振る舞われだすと
だれもがありがたくなってくるのだ。

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