飛騨の細道 36 - 「山が水を。水が町を育む」


■山が水を。水が町を育む

二尺にも満たない小さな川が
古い町並みのいたるところで勢いよく流れている。

水深は10cmにも満たないが、
溝ぎわに生えた水草が輝いてみえるほど、
水はとても澄み切っている。

水もきれいだが、町のひとはおしなべてみんなきれい好きである。
その証拠にどこのうちでも、朝起きるといちばんに
おもての掃除をする。
そして水を打ってから家の掃除にかかるのだ。

朝御飯をいただくのもそれからで、
まず表を清めることから一日ははじまる。

むかしとちがってアスファルトになっても、
水を打った道はしっとりとしていて、気持ちがよい。
真冬は家人だけではなく、通行人が歩きやすいようにと、
積もった雪をまたじする。
そのときも小さな川がとても重宝する。


写真/町家の前を流れる水