飛騨の細道 44-「古都を彩る人間漫画」


■古都を彩る人間漫画

鳥取と島根の県境にゲゲゲの鬼太郎で有名な
境港市(さかいみなと)がある。
この町は漫画家の水木しげる氏の故郷で、
鬼太郎やその仲間たちの妖怪がモニュメントになり、
町のいたるところに登場する。

妖怪といえば、現代からさかのぼること200余年。
江戸時代に一世を風靡した葛飾北斎が描いた「人物漫画」には、
腹なし人間や三つ首人間、そして鳥人間などの
想像人間が大集合している。

見るとそのなかに手長、足長人間も描かれているが、
屋台の恵比須臺の手長、足長人間はそれをモチーフにしているようだ。

想像人間を思いつき、それを描いた葛飾北斎も偉いが、
それをモチーフにして彫り、屋台に載せてしまった
飛騨の匠の谷口与鹿(よろく)も実にしたたかである。

手長、足長人間のルーツは遥か昔、出雲神話に出てくるのだが、
二人はなんと夫婦だというが、
実生活はさぞかし大変ではなかっただろうか。

そんな夫婦がブロンズ像となって、
町の中心部にかかる鍛冶橋を飾ったのが十数年前。
いまでは手長、足長像は観光の人気スポットになり、
みだらし団子を買い求めたあとに、手長、足長像の前で
ポーズをとる人は多い。


写真/手長、足長像の下を流れる清澄な宮川には、水鳥や鯉がたむろしている。