■夏の空に補虫網がゆれる
夏の風物詩ともいえる虫とりの光景は、
飛騨でもさいきん見ることが少なくなった。
原因のひとつに幼稚園児から小学生の男児をとりこにした
ムシキングなる遊びがあげられる。
虫をもとめて野山をかけずりまわらなくても、
家にいながらにしてカードや漫画、そしてアニメのムシキングで
昆虫採取は体感できるのだ。
そんな似非昆虫マニアを鼻でせせら笑うのは、
今回紹介する飛騨のMさん。
彼はインドネシアに始まり、ジャワ島、スマトラ、セレベス島、
ボルネオ島と虫を求めていくども旅をした。
高床式のテントを張り、ジャングルの中で暮したボルネオ島には、
小学三年生の長男も同行させたという熱い男なのだ。
ジャングルでの食事は蝉や蛾が主食。
(日本のものを想像したら大間違い。とにかくデカい)
そしてはりねずみ。
いずれもポータがフライにし、それを食べる。
これが見た目以上においしく、
現地の人にとってはご馳走だというから驚きだ。
採取はといえば、風と一緒に吹き上がってくる虫を切り立った崖の淵に座り、
網でキャッチするのが一般的な捕り方。
ほかには白地の大きなスクリーン(二メートル角)の後ろにライトをセット。
文字どおり、『飛んで火に入る夏の虫』作戦なのだが、
明け方になるとスクリーンは一面、黒や緑、赤色、茶色の虫で埋まるという。
その数たるやハンパではないのだ。
Mさんはこうして採取した昆虫をすべて特殊な方法で処理し、
日本へ持ち帰る。
いまでは海外へ出向くことが少なくなったMさんだが、
派手であでやかな東南アジア産とちがって、
飛騨の昆虫はいずれもデザインが地味である。
そこがまた魅力だとMさんはいう。
侘び寂びはお茶の世界だけでなく、
虫にもあてはまるようだ。
Mさん(自宅のちかくで)