町に溶け込むユーモア
活字が多い新聞のなかでほっと一息をさせるのが、ひとコマ漫画。
題材は世の権力者を相手にしたものが多く、
漫画家の深い洞察や世知の豊かさに読者は思わず苦笑いをしてしまう。
風刺漫画はTVにはびこるだじゃれやギャクと違って、
上品でセンスのあるユーモアが、
殺伐とした暮らしに清涼感を生んでくれる。
ところで風刺漫画といえば新聞や週刊誌が活躍の場だが、
なんと街のウィンドーを使って、
風刺漫画を発表している漫画家が高山にいる。
漫画家の笠根弘二さん(82才)の本業は、
古風な言い方をすれば図案家。
生活の糧として看板制作に勤しんでいるのだが、
持ち前の好奇心は、たわいもない毎日の暮らしに
ユーモアで色を添える。
そして長年、本町通りでたばこ店で営む蒲さん。
パスポやコンビ二の影響もあってか、
数年前に店を畳むことになった。
ところが町家のたばこ店には、
骨董屋さんがうらやむような素敵なウィンドーがあり、
主人はこれを取り壊さずなんとか生かすことができないか?
と悩んだ。
そこで知人の笠根さんの登場となったわけだ。
現在は月一回のペースで作品は入れ替わる。
しかし、アーケードの下を歩く人のなかで、
何人がこの漫画に気づき、
そのひねりの面白さに「してやったり」と
拍手をおくるだろうか。
きっと笠根さんのことだから
観覧動員数よりも、
こうした試みが楽しくて仕方ないのだ。
かくなる私は
ここに来るのを楽しみにしている一人である。
写真/冬期オリンピックにあわせて。