■絵は人なり、手は人生なり
無展覧会などへでかけると、
ぱっと目に飛び込んでくる上手な絵がある。
しかし、じっと見ているとそのうち、
だんだんそれほどにも見えなくなってくるのだ。
正直に申せば森田さんの絵は下手だ。
作品には普遍的な真理だの、
個人を超えた大きな力が宿っているなど、
芸術めいたところはみじんも見受けられない。
でも森田さんは「自分を生かす自然な絵」を
まちがいなく創っている。
作品は創った人の手を離れると一人立ちし、
それ自身で世界観をつくりあげてしまうが、
森田さんの作品はどこまでいっても
森田さん自身とイコールなのだ。
それがとてもいい。
鳥獣戯画図のようなかえるの世界や、
チャーミングな彩りのにわとりの親子、
さらには
「さかさにみたら世界はどうなるのだろう?」など、
幼いころから、虫の目の高さに身を沈め、
そこから見えてくる世界の住人となり続けたきた
森田さん自身が、ここには映し出されている。
眺めているとどの作品にも虚勢をはった外面は見られず、
森田さんのナイーブな内面がほのみえて、輝き、
あるいはその弱さに、見る人は共感する。
考えてみれば作家は100%、目で見て描くのだが、
森田さんは一本一本、こよりに指先をふれ、
指をとおして感性に直結している。
まさに絵は人なり、手は人生なり。
森田義夫◯こよりの世界
9月18日〜9月30日
ギャラリー三井堂
写真/一大好きなカエルを見つめる森田氏