飛騨の細道 106-「風流は寒きなり」


■風流は寒きなり

ほんのり明るい障子の反射を受けたみそ屋の戸板の木目が、妙に艶かしい。
古い町やが続く三之町では、とばりがさがると、
提灯を軒先にさげる。

この提灯は祭礼の献灯提灯ではなく、
地元の若者たちが「日本の灯り」を楽しんでもらうと
計画したイベントである。(期間限定)

献灯提灯とくらべると、
どこか今様にデザインされた感がなきにしもあらずだが、
東西の通りを境に、提灯の形を楕円と円柱に分け、
統一しているところはおもしろい。

閑寂な格子と清楚な軒先、そして闇。
それにくわえ、しとしと降る雨の音が効果音となって
日本の灯りを楽しむには申し分のない舞台だった。

これが真夏の夜ではなく、
見るものが冷たい外気にさらされているから
さらに灯りに透明さが増すのだろう。