飛騨の細道 109-「文様と花もち」


■文様と花もち

高山陣屋は町の中心に位置することもあって、
観光客には人気がある。

門をくぐりると正面の玄関の間に、
青海波という、うろこ状の文様が目に入る。
近づいてみると、海を連想させる碧からはほど遠く、
ほのかで消えゆくような青色が印象的だった。

青海波文様のルーツはカスピ海に発し、
中国西域を経て日本に到来したと聞く。

平安時代では「青波海」というめでたい演目があり、
舞楽衣裳の文様として用いられたというが、
内海の静かな波を想像させる文様は、
どこまでも広がっていく永続性を長久の瑞祥とし、
日本の古典文様として定着した。

古典文様も絵画と同じで、
その保管には十二分の注意が必要なのだが、
青海波文様はむき出しのうえに、
外光にもさらされている。

そのため、間をみてや修復をするのだが、
それに従事するのが、長年地元で活躍している
イラストレータ(デザインもする)だという話を聞いた。


写真/玄関先の青海波と花もち