■野に出れば人みなやさしい桃の花
宮川の水はぬるみ、山河の姿もやさしくなりだすと、
ものの芽が大地を割ってあちこちから顔をだす。
「野に出れば人みなやさしい桃の花」(高野素十)。
まもなく飛騨でもフキのとうが萌え出るが、
ひとあし早く、新芽が町のあちこちにあらわれだした。
春休みに訪れる若者である。
かれらは獣のようにほえもせず、
鳥や虫のように鳴きもせず、
ただ、ただ、もの静かに群れて移動している。
ふと見ると黒い固まり(仲間)が立ち止まってる。
そういう場所のたいがいは中華そば屋か、みだらしだんご。
はたまた飛騨牛の串焼きや、飛騨牛のにぎり寿司など、
簡易的な食べ物屋の前だ。
新芽は何事にも
だらだらと見て、だらだらと携帯で記録して、
だらだらと食べて、だらだらと帰るようだが、
シャキッと見て、シャキッと携帯で記録して、
シャキッと食べて、シャキッと帰るような、
こごみのおひたしのような若者はいないのだろうか。
写真/とりあえず撮ってみるか