飛騨の細道 115-「野に出れば人みなやさしい桃の花」


■野に出れば人みなやさしい桃の花

宮川の水はぬるみ、山河の姿もやさしくなりだすと、
ものの芽が大地を割ってあちこちから顔をだす。
「野に出れば人みなやさしい桃の花」(高野素十)。

まもなく飛騨でもフキのとうが萌え出るが、
ひとあし早く、新芽が町のあちこちにあらわれだした。
春休みに訪れる若者である。

かれらは獣のようにほえもせず、
鳥や虫のように鳴きもせず、
ただ、ただ、もの静かに群れて移動している。

ふと見ると黒い固まり(仲間)が立ち止まってる。
そういう場所のたいがいは中華そば屋か、みだらしだんご。
はたまた飛騨牛の串焼きや、飛騨牛のにぎり寿司など、
簡易的な食べ物屋の前だ。

新芽は何事にも
だらだらと見て、だらだらと携帯で記録して、
だらだらと食べて、だらだらと帰るようだが、

シャキッと見て、シャキッと携帯で記録して、
シャキッと食べて、シャキッと帰るような、
こごみのおひたしのような若者はいないのだろうか。


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