飛騨の細道 119-「花」


■花

春になると人の心はなごむ。
水はぬるみ、山河の姿もやさしくなるが、
その歩みは遅々として、思わせぶりである。

春の遅い山里に行くと、桜も桃も梅もリンゴ、
さらにはモクレンやこぶしまでいっしょくたくに咲き乱れ、
春はあけぼのの一瞬一瞬が過ぎ去るのが、
もったいほどだ。

そういえば庭先の花や朝市の花の色は、
どこかすがすがしく清らかだが、
空気が汚れた都会とちがい、
清浄で水も美しいからだろう。