飛騨の細道 125-「菖蒲と町並み」


■菖蒲と町並み

桃の節句は4月3日、端午の節句は6月5日、
七夕さまは8月7日と、飛騨の歳時記は暦より1ヶ月遅れる。

こういった風習は東北にも残っているが、
「旧暦」の行事の季節感に合わせるために
わざと1ヶ月遅らせているわけだ。
(雪が遅くまで残るため、1ヶ月遅れてちょうど季節感があってくる)

6月4日から5日にかけ、
綴錦織幕がきれいな鳩峯車をもつ屋台組では、家々の軒に菖蒲とよもぎを差す。
組の人に伺うと、菖蒲の生命力とよもぎの強い香気は不浄をはらい、
邪気を退ける霊威があるという。

町家が軒をつらねるこの通り、
使いこなしたベンガラ色に、色あざやかな緑が冴え、
肉厚でまっすぐに伸びる葉が、
町家にあらたな命を吹き込んでいるようにもみえた。


写真/下二之町通り