飛騨の細道 144-「飛騨の里、外国人ガイド」


■ガイドの塚越さんに尋ねた

外国の方はとても好奇心が旺盛で、
意外なものが興味の対象になっていて、
質問されてはじめてその視点に驚きます。

里山の魅力というのは、一言で言えば、
大自然の中でのちっぽけな人間という存在を理解した上で、
自然に逆らうことなく、謙虚に生きているという、
人間の姿でしょうか。

『車田』はその一つの例と言えると思うのですが、
神事に関係している田であったといわれる特殊な田植えで、
神聖な田として崇められています。

ここには肥料も下肥も使わず、
木の若枝だけを使い、汚れた水も入れないようにしています。
現在では『車田』は佐渡と高山にしか残っていなくて、
とても貴重なものです。

『車田』で収穫された稲から藁をとり、
縄をよって注連縄を作る、という一連の流れが見られるのですが、
人間の謙虚な祈りというものに心を寄せることができるんですね。
こうした思いは日本人にしかわからないと思うのは驕りで、
外国の方にも充分理解ができます。

暮らしの知恵は、物が豊かになればなるほど低下していくようですが、
施設内を歩いていて気づかされるのは昔の村人たちの知恵。
ここにいると改めて大地に根付いた暮らしの大切さを、
感じさせられます。

塚越さんは、外国の方をあわせ鏡にし、
つつましやかに生きていた古き飛騨の姿を、
自分の中に映し出している
ようにも思えた。


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