飛騨の細道 150-「標高1,326mの神社」


■標高1,326mの神社

この神社の所在地は、
高山市丹生川町折敷地十二ヶ岳である。
地名の十二ヶ岳は標高1,326mの独立峰を指す。

頂上の展望台からは北に白山、南東に御岳、東に乗鞍連峰、焼岳、
前穂高と続き、黒部五郎までの12の山が見え、
十二ヶ岳の名の由来がうかがえる。

その展望台の隣のあずまやの一角に
笹山神社(別名権現さま)が鎮座されているのだ。

祭祀は毎年、7月31日夕刻より前夜祭がおこなわれるというが、
金星が西の夕空に光りはじめると、
東の乗鞍は茜色に染まりだし、
祝詞をよみあげる神々しい神主の声とともに、
しだいに空は群青色へと移りかわる。

そんなシーンを想像しながら、
神主の前で、畳に頭をたれる氏子たちのモノクロ写真を見ていた。

いのいちばんに考えたのは、
「あずまやの畳はどこにあったの?」。
「神主は袴のままで山に?」

どうやら登山道入口ちかくまで車で運び、
氏子たちが必死になって頂上まであげたようだ。
畳一枚に一人だとスペース的に最低6人の氏子がいる。
さらにお神酒をはじめ、スルメやお米、
鯛などの献上品を背負う氏子もいるだろう。
(この神社の氏子はシェルパなみの体力を必要とするのだ)

神主は手にした鞄のなかに袴や烏帽子、勺。
そして大切な祝詞を入れ、
氏子の先頭にたってのぼったに違いない。

お寺でも当たり前のように椅子を使用する時代、
人は神の前では、どこまでも敬虔の念が深いのだ。


写真/ブナ林の自然林の中をのぼる。右写真下/正面には丹生川から高山市内の町が眺望できる。