飛騨の細道 152-「まなざしの記憶」


■まなざしの記憶

昔、現在ほど写真が盛んでないころ、
高山には細江光洋と田中一郎という男がいて、
写真に熱をあげていた。

やがて二人の写真道楽は高じ、
それぞれ『細江スタジオ』『田中スタジオ』という
写真館をもつようになった。

写真館の経営者でありながら写真師でもあった二人だが、
細江光洋はドキュメント指向、田中一郎はアート指向と、
それぞれ歩む道は異なった。

ところが二人は終生アマチュアをとおし、
撮りたいモノしか撮らない。
写真することが楽しい。
もっといえば写真を生き甲斐にした人生を送った点は
共通していた。

時の人となってひさしい二人だが、
二年ほどまえ、田中一郎さんの娘さんが
スタジオの一角に父の作品館をつくった。

瀟洒な白い空間はとても小さいが、
みずみずしい主の感性があふれている。
そこに身をおけばあなたは、
昭和の高山とともに時代を走り抜けた、
主のまなざしが感じられるはずだ。

駅前から古い町並みへと続く小径の右手に
岐阜新聞高山支局が見えるが、その隣。
■午前10時から午後5時まで(火曜定休/無料)