■提灯屋
筆に墨をつけ一気呵成に書く。
ところが雑念がはしり、
途中でとまると、つい、あと戻りをしてしまう。
いちど筆をおろしてから、どうも気に入らなくて、
もういちどなぞり書きをすることを『提灯屋』といい、
よくないとされる。
『提灯屋』とは、江戸時代以来の看板屋や、
提灯屋がなぞりながら文字をつくることから
そのように呼ばれたという。
しかし、数歩ゆずって、
提灯はカタチといい、その文字といい、
実にすばらしい意匠である。
10月、八幡祭りになると、
川東の町すじにはこうした提灯が町屋の軒をつらね、
夜になるとぽっーと灯りがともる。
たとえ提灯の文字がなぞられていても、
りんとした美しさは感動的である。
写真/出格子と提灯はお互いをひきたてる