飛騨の細道 157-「レトロな味」


■レトロな味

三嶋豆のブリキ缶のラベルに印刷されている
シンボルマークの絵馬は、先代の10代目長瀬久兵衛が
明治39年に商標登録を出願したのだが、
その頃にこのブリキ缶の意匠も考案されたという。
実に100年以上に渡って守り続けられたきた意匠である。

現在、材質はブリキからスチールに替わり、
外観は少しぽっちゃりしているが、
どっしりとした面がまえは、
時代がたっても風化していない。

さて、中身の豆だが、13代目の店主の公昭さんに尋ねると、
近々、純国産のうす青豆大豆(純品種)で三嶋豆を作るというが、
歯で噛んだ感触と豆の甘さは現在と較べようがないくらい美味しいと、
自信ありげに語った。

そういえば、白い豆の甘さに混じって深緑色の海苔味が、
口の中で不意打ちをかけてくるのが三嶋豆の面白いところで、
子ども時分に海苔味ばかりを選り、親に叱られたことを思い出す。

じつのところ、この深緑色の海苔味に使われる豆は、
形の悪いものを使うための苦肉の策。
そこは長瀬久兵衛、じつに美味しい妙案である。


写真/一升瓶に塩漬けして保存をする姫竹