飛騨の細道 158-「クイズ番組のような銭湯」


■クイズ番組のような銭湯

お寺の名前が町の名前になった
宗猷寺町(そうゆうじ)。
この町には『鷹の湯』という古くから続く銭湯がある。
じつはここには不可思議なものがある。
(まるで世界ふしぎ発見のレポータのような出だしだが)

脱衣室をのぞけば、アメ色になるまで使い込んだロッカーがあり、
浴場に入れば、壁には昔なつかしい富士山の絵が書かれてある。
と、ここまでは、ノーマルで古風な感じの
お風呂やさんなのだが……。

湯上がり後、番台をみると、
なんと後方の壁に大仏殿(奈良)の唐破風を模した、
とても小さな社が祀ってあった。
(ここからがおかしくなる)

見れば過剰な飾りを抑えた品のある造りで、
屋根部はすっかりと黒ずんでいた。
ガラス戸の中をのぞくと、
なんとお地蔵さんが祀ってあったのだ。
伺うと、三代前から番台に祀ってあったというが、
なぜ、お風呂屋さんに地蔵なのか?

驚くのはこれだけではない。
玄関の上がり立てにはじつのところ、
トマト一袋100円、カボチャ1つ100円と、
青空市場ならぬ浴場市場が開かれてもいたのだ。
なぜ、お風呂屋さんに野菜が売ってあるのか?

いずれも意表をつく組み合せだと思うのだが、
主はこちらが思うほど、深くは考えていなかった。


写真/江名子川、助六橋の向こうに煙突がみえる