飛騨の細道 178-「山のような静かな公園」


■山のような静かな公園

樹々がおいしげる公園。
その向こうから恐ろしいほど上手い、
ギターの音色が風に運ばれて聴こえてくる。

高山の町の中にあるこの公園は城山と呼ばれ、
江戸時代に高山をおさめていた金森公の城あとが残っている。
赤い橋から東をながめると小高い山が見えるのがそれである。

今から40年前ぐらい、免許をとったばかりの私は、
城山を一周する山道を煙をもうもう吐きながら車で走ったことがある。
当時は自然に対する配慮は今ほどでなく、
公園の二の丸と金竜ヶ丘の2カ所に茶屋があった。
今は車両通行止めでウォーキングのコースとして市民に活用されている。

城山の歴史は付属施設の歴史でもあり、
金森長近の銅像がある場所にはかつてペンギンたちがいた。
名古屋市からのプレゼントだったように思う。
それより以前には坂の途中にたぬきやきつねなどが檻に入れらていたが、
異臭がクレームとなり、やがて撤去された。

照蓮寺前の空き地ではプロレスの公演を皮切りに音楽堂を建設。
その後音楽堂はリニューアルされ、
くじゃく小屋か鳩舎に変わった記憶がある。
その場所から少し上がったところには料理屋があったようにも思うが、
幾年かの年月の間に、消えたものと、あらたに登場したものが
(記念碑とか戦争に関係した碑)
入れ替わり立ち替わりしながら、公園は現在にいたっている。

話は戻るが、ギターを弾く主人は
25歳で独学をはじめたフラメンコのギターリストの
伊藤惣吉さん(高山市在住)であった。

フラメンコギターはクラシックギターとくらべて小ぶりなのだが、
弦が放つ音色は強くて張りがあり、
弾けばすぐ響くといったレスポンスも早い。
聞けばギターはドミンゴ・エステーソという名器だという。
(多分、ん百万もするんだろうな)

鳥にはギターの値打ちはわからないだろうが、
まったく違う生き物のさえずりに驚いているのはあきらかで、
山はこのときだけ、耳を澄ましているようで静まり返っていた。